トップ > 寄稿・コラム > 経営品質のすすめ > 【第3回】「経営者の想い」からゴール・イメージを創る
1.そもそも経営の問題解決とは何か?経営課題とは何か?
人の成長を考える時、「将来、何になりたいか」というゴール・イメージを描いて、将来のありたい姿に向って教育を受け、自ら学習し、人の輪を作り、少しずつ目標に近づいて行きます。成長とともに価値観は変わりますので成長の過程で目標は変わり、成功・失敗を繰り返しながら人は成長して行きます。
企業という「法人」の成長も全く同じですが、個人と違うのは自分の意思で休息することが許されないことです。「常に成長すること」が企業の社会的責任として求められます。
企業の場合も、将来のゴール・イメージという「将来のありたい姿」が明確でないと、成長のための課題(何をすれば良いのか)が何かを的確に判断することができません。結果的に目先の問題に振り回されることになり、本質的な問題はいっこうに解決せず「苦労はしたが実らず」という結果になりかねません。これは大変困りモノですが、このような悩みを抱えている経営者は多いのではないでしょうか。
世の中で問題解決と言われるもの(教育やコンサルテーション)には、目先の問題解決技術を売りにするものも少なくありません。「成長」や「自己実現」の「シナリオ」を描き、その実現に必要な問題解決であることを必ず検討しなくてはなりません。このような中長期の目線で考え、取組むべきかどうかを判断することが望まれます。経営品質ではこの「将来のありたい姿」を「価値前提」と呼び、経営マネジメントの最も重要な柱としています。
「将来のありたい姿」に近づくため今、何をしなければならないか、これが経営課題です。つまり将来から現在を見ることにより、コンサルタントなどに頼らず自分自身で問題を捉えるのです。このように、目先ではなく自身の成長のための本質的な課題を捉え、解決しようというのが経営品質流の問題解決の最大の特徴です。
第3回は、企業が将来に向って成長を続けるための課題を見つけるために、「将来のゴール・イメージ」をどのようにして創るのかというテーマで解説を行います。
2.将来のゴール・イメージとは
将来のゴール・イメージとはどのようなものでしょうか。何を想定すればよいのでしょうか。実は極めてシンプルです。マーケティングの原点に立ち戻って見ると、「お客様」がいて、その「ニーズ」に対応するための「手段」を提供すること、つまり、
● 誰に (どのようなお客様をターゲットとして)
● 何を (どのようなニーズに対して)
● どのように (どのような商品やサービスを提供するのか)
を具体的に決めれば良いのです。しつこく書きますが、「将来の誰に、何を、どのように」であって、「現状の誰に、何を、どのように」ではありません。世の中の変化を推測して近い将来のゴールを設定するのです。従って、これは企業の事業コンセプトとなります。
シンプルですが、この考え方には深い意味がありますので以下に説明します。
(1)誰に(どのようなお客様をターゲットとして)
「今、うちはXX社と付き合っているからうちの顧客はXX社と・・・」、こんなことを聞いているのではありません。
自社が顧客・市場を見る場合の目の付け所を明確に決めて、どのような特性のある顧客・市場とこれから関係性を作って行くつもりかを明確しなさい という意味です。今後、近い将来に渡って、主体的にどのような市場分野を攻めて行くのかを、自社なりに明確化せよ と言っているのです。
(2)何を(どのようなニーズに対して)
お客様がもっている要望や期待を想定しなさい ということです。しかし、お客様自身も市場競争にさらされているわけですから、経済環境の変化などに伴なってお客様のニーズも変化して行きます。従って、現状のニーズが判ったと満足するのではなく、変化するお客様のニーズを今後もどのような方法で掴むのかということを含めて検討することが必要です。
(3)どのように(どのような商品やサービスを提供するのか)
お客様のニーズに対して、「どのような価値をどのような手段でお客様に提供するのか」を明確にして、他社を差別化をせよ ということです。競争を勝ち抜くために、付加価値をお客様に提供するプロセスで他者を差別化し競争に勝てということです。
競争相手も必死で考えて来ます。独自の付加価値を持たねば価格競争という泥沼の消耗戦に巻き込まれてしまいます。資本力の小さな中小企業が絶対にやってはならない選択です。 競争相手も常に変化していますから、今後の競争環境を予測しながら決める必要があります。
このように、言葉はシンプルですが、実際決めようとすると相当の覚悟が必要です。自社がおかれている経営環境をよく調べ、近い将来を見通し、皆で議論をし、検討しなければなりません。そして大切なことは、このようにして決めた「将来のありたい姿」を全社員で共有化し理解することです。
3.重要なものは「経営者の想い」
このような「将来のありたい姿」を検討する時、最も大切にしたいのは、何と言っても 「経営者の想い」 (熱い想い)です。なぜなら、会社の価値観は経営者の想いから形成されていることが多いからです。(残念なことに想いが希薄な経営者もいますが)この「想い」を軸に、以下のものを加味して検討します。
● お客様・市場の動向
(お客様や市場の特性、ニーズは今後どのように変化をして行くか)
● 競争企業の動向
(競争相手はどのような手段で戦っているのか。今後どのように変化して行くか)
● ビジネスパートナーの動向
(パートナー企業の特性と、当社への期待がどのように変化して行くか)
● 社会的動向
(経済環境や技術がどのように変化して行くか)
● 自社の経営資源の特徴
(自社の強みと弱みは何か、今後どのように変化して行くか)
当社では、経営品質を軸足にしますが、個々の問題の処方箋についても検討するサービスを行います。大切だと思うことは、一時的な「その場しのぎ」ではない、お客様の将来の成長につながる提案とすることだと考えています。
4.組織プロフィールと改革の方向性
このようにして取決めた「将来のありたい姿」を「組織プロフィール」と呼びます。組織プロフィールは「社長の想い」を実現した将来の事業イメージ、つまり将来に向っての具体的な「変革の方向性」が描かれてているマップです。これは全社員に周知し共有化せねばなりません。
また、人材育成や、組織力強化、顧客関係性強化、品質管理、情報セキュリティ管理、財務体質改善など、会社の経営を改善する様々な取り組みがありますが、どのようなものであれ、この「 組織プロフィール 」の実現に貢献するものでなければなりません。
このように、全ての企業活動は「組織プロフィール」の実現に向けて集約されます。「将来のありたい姿」という共通の価値観の実現に向って企業活動が進むことになります。従って、この組織プロフィール(将来のありたい姿)のことを「価値前提」と呼びます。
次回第4回は、「顧客の理解と信頼作りから競争優位を作り出す」という内容です。