トップ > 寄稿・コラム > 経営品質のすすめ > 【第5回】価値を生み出すためのリーダーシップとは
リーダーシップと言うと「強力な指導力をもったリーダーが、ぐいぐいと組織を引っ張っていく」イメージを想像する方も 多いのではないでしょうか。 しかしながら右肩上がりで経済が成長していた時代ならいざ知らず、 環境変化の激しいこの時代においては「リーダーが事を決めなければ動かない」組織であっては、 お客様からパートナーとしての信頼を獲得ることなどできるはずがありません。 お客様との接点となる現場の社員の1人1人が全社の方針をきちんと理解し、 自らの意志でなすべきことを決定できる環境が整備されていなければ迅速な対応はできないでしょう。 また現場で経験した成功体験/失敗体験から成功要因/失敗要因を学習し, 組織全体でこれを共有化し次期の戦略に反映させるような組織的な学習の仕組みがなければ、 組織としての成長はあり得ないでしょう。 このような、現場が自律的に行動できる環境を整備するには、 会社が大切にしている価値観を全社で共有化し、自由闊達なコミュニケーションができる文化の醸成が必要です。 経営品質でいうリーダーシップとは、このような活動です。では以下に具体的に解説しましょう。
1.価値観を共有するためのリーダーシップ
会社の「将来の事業のゴール・イメージ」や「どんな社会的使命を果すのかというミッション」などは全社で共有すべき大切な価値観です。 しかしこの価値観は、社内はもちろんですが、事業のターゲットになる「お客様」に理解してももらわねば、自社の商品やサービスをお客様に利用していただくことはできないでしょう。また、お客様へ価値を提供するために協力をしてもらっている「ビジネス・パートナー」にも認識してもらわねば、ビジネスがうまく回らないでしょう。 このため、社長やリーダーは「お客様」や「ビジネス・パートナー」を含む社内・社外の利害関係者と活発なコミュニケーションを行って、自社の価値観を理解してもらうよう努めなければなりません。
2.変革の課題の解決のためのリーダーシップ
第3回「『経営者の想い』からゴールを作る」では、自社の「将来のありたい事業の姿」として「組織プロフィール」というものをご紹介しました。 この組織プロフィールは、将来の事業のありたい姿として「誰に、何を、どのように」を明確にするものでした。この組織プロフィールの中には、将来の事業のゴール・イメージに近づくための「変革への課題」を含んでいます。将来の目標とするゴール・イメージに近づくため何をなすべきか、ということです。 この変革への課題を解決するために、「社長やリーダー」は率先垂範して組織体制や制度上の工夫を行わねばなりません。
3.自由闊達なコミュニケーションができる社内文化作りのためのリーダーシップ
社員が生き生きと問題解決に向けて自律的な改善活動を行うためには、組織内で自由闊達にコミュニケーションができる風土、明確な意思決定により社内の合意形成(コンセンサス)が行われる仕組みなどが整備されていなくてはなりません。 「社長やリーダー」は、現場へのエンパートメント(権限委譲)をも視野に入れ、このような社内文化を醸成するための工夫や取組みを行う必要があります。
4.全社的なレビューのためのリーダーシップ
将来の事業のゴールへ向けた変革がどの程度進捗しているのか、売上・利益などの財務指標や顧客満足度やリピート率などがどのように変化しているのか。これらは会社の改善活動が効果を出しているかどうかを判断するために大切な情報です。 種々の改善活動が、成果としてそれらの指標に確かに反映されているか振り返りを行なうため、適切な指標を選択して情報収集を行い全社的なレビューを行う必要があります。